抄録
急速に深刻化する海洋プラスチック汚染は、生態系にも大きな影響を及ぼしており、対策が急務となっている。日本では2009年に「海岸漂着物処理推進法」が制定され、地方自治体は国庫補助も受けて回収・処理事業を進めている。しかし、海洋ごみの主要な流出源である河川ごみの回収やその発生抑制の取り組みは、海岸漂着ごみの回収・処理と比べてそれほど進んでいない。
本研究では、長崎県対馬市で実施したアンケート調査をもとに、住民の協力度や子供への自然環境の継承など従来の研究では見落としてきた視点を取り入れて、地域の河川や水路の清掃活動や、使い捨てプラスチックの削減に向けた人びとの実践行動がどのような要因によって成り立っているのか、その意識構造を明らかにする。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大が地域の活動にどのような影響を及ぼしたのか、聞き取り調査をもとに分析し、地域における海洋ごみ対策のあり方について考察する。