水資源・環境研究
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特集論説
大戸川ダムと丹生ダムに何が起きたのか?
−知事として挑戦した日本のダム問題と流域治水−
嘉田由紀子
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2023 年 36 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

編集者から「日本のダム問題」について全体の概要解説と同時に琵琶湖淀川水系の大戸川ダム、丹生ダムの経過報告の依頼をいただいた。江戸時代から現在までの日本の河川政策を大きく4つの時代区分でたどり、私が滋賀県知事として2014年に「流域治水推進条例」を制定した学問的背景をたどった。流域治水は江戸時代以来の日本の地域社会に埋めこまれていた「近い水」思想に根ざした自然との共生・共感を内包した「はん濫折り込み済み治水」の経験と知識を今の時代に援用したものだ。一方、大戸川ダムや丹生ダムは近代科学技術の制御・管理論を基本思想として、高い堤防とダムで「河道内閉じ込め型治水」思想に根ざし、そこに中央集権型の公的予算付与が政治的権力と結びついて積み上げてきた「遠い水」政策だ。淀川水系流域委員会で積み上げた「ダムだけに頼らない治水」を実現するために、流域住民にとって真に望ましい流域治水をいかに実現するのか、その未来への可能性も提案したい。流域の未来は流域住民自治にかかっている。

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© 2023 水資源・環境学会
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