抄録
30年来、球磨川流域のフィールド活動を実施してきた筆者は、2020(令和2)年7月4日に発生した球磨川大水害後、地元八代市の坂本村の救援活動を開始すると同時に、球磨川流域の山腹現場、すべての水害犠牲者の住居地訪問、多くの聞き取り活動、中下流域の殆どの被災集落の被害実態検証等、様々な現場に足を運び、現場での検証を重ねてきた。一方で、水害の直後には、2008年に中止になった川辺川ダム計画が流水型ダムとして浮上し、十分な検証も行われずに計画は急スピードで進んでいる。筆者の検証から見えてきたものは、降った雨を川の中でコントロールすることを含め、国が行おうとする流域治水の限界で、今までの河川政策、土地利用政策、森林政策等、流域の土地改変に関わるすべての政策を見直す必要があるのではないかということである。今回調査が及ばなかった人吉市内や球磨川南部の地域については触れていないが、球磨川流域で起こったことは全国どこでも起こりうる問題であると確信している。