木材保存
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研究論文
木材腐朽性担子菌により腐朽された木材が有する鉄還元能の調査
近藤 里沙子堀川 祥生赤井 伸行安藤 恵介吉田 誠
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 48 巻 1 号 p. 8-17

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抄録

褐色腐朽菌はその進化の過程において,リグニン分解や結晶性セルロース分解を担う酵素群が関与する分解酵素システムを縮小させる一方で,非酵素的な分解システムであるChelator-mediated Fenton(CMF)反応を発達させてきたと考えられている。CMFメカニズムは二価鉄と過酸化水素により生じる水酸化ラジカルを利用した分解系であるが,その二価鉄は木材細胞壁中の三価の鉄が還元されることで生成すると考えられている。この鉄還元物質についてはこれまでに多くの候補が挙げられているが,詳細は依然として不明である。そこで本研究では,7種の褐色腐朽菌と1種の白色腐朽菌でスギ木片をそれぞれ腐朽させ,その腐朽材が有する鉄還元能を調査した。その結果,褐色腐朽過程で生成する水溶性物質が鉄還元に大きく寄与する一方で,重度の腐朽状態に至った材の残存成分は鉄還元能がほとんど見られないことが示唆された。

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© 2022 公益社団法人 日本木材保存協会
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