木材学会誌
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一般論文
鎌継手におけるせん断面の繊維方向長さが引張強度に与える影響
画像相関法による鎌のひずみ分布解析
宇京 斉一郎林 知行原田 真樹軽部 正彦
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2007 年 53 巻 2 号 p. 90-98

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抄録
画像相関法を用いて引張加力における鎌継先端部のひずみ分布解析を行い,せん断面の繊維方向長さがひずみ分布および引張耐力に与える影響について検討した。鎌のあご幅(d)および鎌せい(H)を固定し,鎌のせん断面の繊維方向長さ(L)を変化させ,破壊実験した結果以下のことが明らかとなった。
(1)鎌の寸法比(L/d)が8以上では,せん断面の長さを大きくしても最大荷重は頭打ちとなった。
(2)鎌のあご付近では大きな繊維直交方向の引張ひずみが観察され,ひずみ量から最大荷重時には局部的な先行破壊を生じていることが明らかとなった。最大荷重における局部破壊の大きさを推定した結果,局部破壊はせん断面の長さ(L)によらず,繊維方向にほぼ同じ長さの範囲で生じることが明らかとなった。
(3)せん断ひずみは鎌のあご付近に集中し,鎌の先端に向かうにつれて減少する分布を示した。弾性域におけるせん断ひずみのあご付近への集中度を,せん断面における平均ひずみ量に対する最大ひずみの比(Cγ)として求めた。Cγ は標準的な寸法比の鎌(L/d =10)において3.7を示し,L/d =14まで,せん断面の長さが大きくなるにつれ増加する傾向を示した。
(4)せん断ひずみの集中度を用いてせん断面における応力集中を考慮し,鎌継の引張耐力の推定を行った結果,推定値と実験値との良い一致を得ることが出来た。
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© 2007 一般社団法人 日本木材学会
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