霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: P-19
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ポスター発表
シファカ地上二足ホッピングのヒト二足歩行能獲得に於ける意義-ワオキツネザルの観察から-
*藤野 健
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抄録
シファカは地上ではヒト子供のスキップに類似したbipedal sideways hoppingを行う。左右交互に体幹の向きを時々切り替えて前方に進む例も観察されるが、これはテナガザルの腕渡りに観察される様な体幹長軸回りの回転を推進力産生の要として直接利用するロコモーションでは無いものの、その回転を行う点では等しい。即ちこの事実は、体幹を直立させ且つ体長軸回りの反復的回転運動を行うとの類人猿並びにヒトに観察される運動特性が既に原猿の段階で萌芽的に或いは平行進化的に獲得されていることを推測させる。この考えを基に、シファカのbipedal sideways hopping の起源を探るべく、今回ワオキツネザルの観察を行った。
<方法>(財)進化生物学研究所で飼育されるワオキツネザル5頭をスチール並びにビデオ撮影し動作解析した。併せてweb上のシファカ動画像と比較した。
<結果>ワオキツネザルは頻繁に地上に降りて四足歩行するが、好奇的行動として時々後肢のみで立ち上がる。が股関節は伸びきらずまた二足で進む事は無い。一方ケージの金網に掴まり立ちをしてそのまま横這いし、体幹を回転させて翻り、別の金網面に跳躍する動作は頻繁に観察された。シファカは樹上ではしがみ付いた幹から幹へと跳躍するがこの時体幹長軸回りの捻れは発生する。水平な幹の上でもけして四足歩行せずに後肢で兎跳びをして進む。
<考察>シファカのbipedal sideways hoppingはワオキツネザルの金網横這い運動に、また左右の切り替えは体幹を捻りながら別の媒体に跳躍する運動に起源を求めることが可能だろう。ヒト型地上二足歩行を可能とするテナガザルでは上下の平行ロープを渡る際に体幹を直立して横這いで進んだり左右交互に体幹を回転させて進むが、シファカが広義の地上二足歩行を可能としたのも類似の運動性を獲得した事がその根本にあると考えた。
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© 2008 日本霊長類学会
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