抄録
この研究では,オビスギ樹幹の高さ方向における材質変動を明らかにするために,オビスギ15品種材の胸高部と地上高 5 m部の木材材質を髄から木部最外層にかけて調べ比較した。その結果,胸高部と比べて地上高 5 m部では,縦圧縮ヤング率と縦圧縮強さが増大し,髄から木部最外層に至る放射方向での力学的性質の変動も増大する品種が多いことがわかった。胸高部に比べて地上高 5 m部で縦圧縮ヤング率および縦圧縮強さが増大する原因は,おもにミクロフィブリル傾角の減少によると考えられた。つぎに,オビスギ林木の根元から梢端に至る高さ方向での材質変動を調べたところ,動的縦ヤング率の高さ方向変動を組織構造指標の変動によって上手く説明できることがわかった。また,樹幹の動的縦ヤング率,その高さ方向の変動および組織構造指標の高さ方向変動への樹高成長量の関与が示唆された。