2011 年 57 巻 5 号 p. 283-292
マイタケ廃菌床のセルラーゼ糖化の前処理として,希硫酸処理と水酸化ナトリウム処理を行い,グルコース収率上昇に及ぼす効果を検討した。その結果,前者は,未処理のものと比較して顕著な差異が認められなかったのに対し,後者では,前処理の効果が顕著に認められた。これは,廃菌床中に含まれるリグニンやヘミセルロースの減少率が,前者と比較して後者の方が高くなったことによると考えられる。また,マイタケ廃菌床(SMCM)は,培地原料のブナオガコやマイタケ菌植菌前培地(MCM)に比べて,水酸化ナトリウム処理後の糖化によるグルコース収率が著しく高くなった。これらのことから,廃菌床は,マイタケが生育することにより一部前処理が行われた,糖化が容易な木質バイオマスであることが明らかとなった。