木材学会誌
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総説
木材構成成分の酸性条件下での化学反応におけるカウンターアニオンの役割
横山 朝哉
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2015 年 61 巻 3 号 p. 217-225

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抄録
塩酸,硫酸,および臭化水素酸のカウンターアニオンが,二量体非フェノール性β-O-4型リグニンモデル化合物(J)と糖モデル化合物メチルグルコシド(S)の酸性条件下での反応においてどのように挙動するのかについて,詳しく検討した。既往の知見通り,(J)のβ-O-4結合は,臭化水素酸の系で最速で,そして,硫酸の系で最遅で開裂することが,確認された。また,臭化水素酸の系では未知の機構でβ-O-4結合が開裂することが,そして,(J)から生成するベンジルカチオン中間体のβ-位から,水素が水素化物アニオンとしてカチオン中心に転移する機構が存在することが,初めて示唆された。(S)の反応では,20世紀中期からプロトン活量のみが反応速度決定因子であることが一般的に受け入れられてきたが,臭化物アニオンと塩化物アニオンが直接関与し,(S)の加水分解速度に影響を及ぼすことが,初めて強く示唆された。
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© 2015 一般社団法人 日本木材学会
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