1980 年代以降,現代福祉国家の多くでは「新自由主義的な」再編が進めら
れてきた.規制緩和と分権化を通して,様々な公的福祉サービスが民営化・市
場化されていったが,福祉の論理は一般に市場の論理とは相容れないため,福
祉サービスを市場経済のみにおいて十分に供給することは難しい.このため,
次第に福祉サービス供給の場として「準市場」が形成され,その受け皿として
NPO 等の市民福祉が積極的に活用されるようになった.また近年では,市民
福祉が,さらに「地域」の役割と利用者の「参加」を強調するような新たな政
策的動向と結びつけられながら「制度化」されつつある.
生活困窮者支援の領域においても同様の傾向がみられる.その際,頻繁に用
いられるキーワードが「自立支援」であり,そうした支援の担い手として市民
福祉への期待がますます高まっているのである.本稿は,このことの含意に光
を当てるものである.そこでは,「市民福祉」の活用が公的責任の縮減と表裏
一体で進行していること,そして貧者への「再分配」(経済的給付)が切り縮
められる一方で,「自立支援」の拡充とともに経済給付を伴わない「承認」が
前景化しつつあり,両者が取引関係に置かれていることが論じられる.