2012 年 9 巻 p. 26-45
本稿は,埋橋らによる,日本のセーフテイネットの3層構造に依拠して,
震災対策を階層に分けて論じた(埋橋ら2010) .第l層は雇用対策,第
2層は社会保険と福祉サービス,第2.5層は社会手当・貸付制度,税制度,
震災特化型公的給付・貸付制度,第3層は生活保護制度である.第2層で
の給付内容を検討すると,従来の社会保障制度で問題とされてきた社会保
険制度聞の調整,地域格差,給付水準の低さといった諸問題が今回の震災
でも課題として残されていることが明らかになった.また,第2層, 2.5
層について共通している問題として,個人に対する金銭支援が給付ではな
く貸付に偏っているということがある.
また,震災に関する諸給付は,地域要件(被災地と認定された地域のな
かで被災したこと)と被害・損害要件(人,住宅・家財等に関する被災の
程度)に応じて給付されることになっているため,セーフティネット構造
からそもそも抜け落ちてしまう層が存在する可能性について指摘した.そ
の層とは,被災地の外に出た県外避難者,自主避難者,間接被災者である.
特に,地域要件と被害・損害要件を満たさないものの,原発による放射線
被害を逃れて自主的に避難した者や被災地域に周辺に居住して震災の影響
を受けて失業した者(一次産業従事者含む)などの自主避難者や間接被災
者に対しては,他の被災者に準じた公的支援の方策を検討する必要がある.