化学と生物
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解説
歯周病と全身疾患の関連
口腔細菌による腸内細菌叢への影響
山崎 和久
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2016 年 54 巻 9 号 p. 633-639

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抄録

歯周病は心筋梗塞や狭心症などの原因となる動脈硬化症,糖尿病,関節リウマチなど,実にさまざまな疾患のリスクを高めることが報告されている.これまでその関連メカニズムに関して,プラーク中の歯周病原性細菌が炎症により損傷した歯周ポケット上皮より組織内に侵入し,全身循環を介して遠隔組織に影響すること,歯周炎組織で産生されたさまざまな炎症性サイトカインが全身循環を経由して血管,脂肪組織,肝臓などに持続的かつ軽微な炎症を起こすと考えられてきた.しかしながら,歯周病が全身疾患の発症・進行に関与するメカニズムについてはいずれの説も決定的ではなく,依然として不明な点が多い.われわれは歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisを口腔から投与するモデルを用いて,肥満モデルや糖尿病モデルマウスで見られるのと同様,腸内細菌叢が変動し,血中内毒素レベルが上昇することを明らかにした.腸内細菌叢の変化は動脈硬化症,糖尿病,関節リウマチ,非アルコール性脂肪肝疾患,肥満など歯周病とも関連する疾患のリスクファクターであることが知られている.大量に飲み込まれた歯周病原細菌が腸内細菌叢を変動させるというマウスにおける実験結果は,従来の仮説では十分に説明することができなかった歯周病と全身疾患の関連の因果関係を説明するのに合理的な生物学的分子基盤を提供する.

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© 2016 by Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
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