化学と生物
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54 巻, 9 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 植村 浩
    2016 年 54 巻 9 号 p. 626-632
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    リシノール酸にはさまざまな工業的用途があり,特にウレタンなどの化成品原料として注目されている.筆者らはこのリシノール酸の分裂酵母での生産を試みた.リシノール酸は水酸基を含む特殊な脂肪酸であるため酵母の増殖を阻害したが,その増殖阻害を抑圧する遺伝子としてホスホリパーゼA2活性をもつplg7が見いだされた.Plg7pはリン脂質上で合成されるリシノール酸をリン脂質から切り出して細胞膜の機能を回復して増殖を戻すと考えられたが,同時に切り出された遊離リシノール酸は細胞外へ分泌された.本来脂肪酸や脂質を分泌できない分裂酵母でリパーゼの活用により遊離リシノール酸を細胞外へ分泌生産できる可能性が示された.
  • 口腔細菌による腸内細菌叢への影響
    山崎 和久
    2016 年 54 巻 9 号 p. 633-639
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    歯周病は心筋梗塞や狭心症などの原因となる動脈硬化症,糖尿病,関節リウマチなど,実にさまざまな疾患のリスクを高めることが報告されている.これまでその関連メカニズムに関して,プラーク中の歯周病原性細菌が炎症により損傷した歯周ポケット上皮より組織内に侵入し,全身循環を介して遠隔組織に影響すること,歯周炎組織で産生されたさまざまな炎症性サイトカインが全身循環を経由して血管,脂肪組織,肝臓などに持続的かつ軽微な炎症を起こすと考えられてきた.しかしながら,歯周病が全身疾患の発症・進行に関与するメカニズムについてはいずれの説も決定的ではなく,依然として不明な点が多い.われわれは歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisを口腔から投与するモデルを用いて,肥満モデルや糖尿病モデルマウスで見られるのと同様,腸内細菌叢が変動し,血中内毒素レベルが上昇することを明らかにした.腸内細菌叢の変化は動脈硬化症,糖尿病,関節リウマチ,非アルコール性脂肪肝疾患,肥満など歯周病とも関連する疾患のリスクファクターであることが知られている.大量に飲み込まれた歯周病原細菌が腸内細菌叢を変動させるというマウスにおける実験結果は,従来の仮説では十分に説明することができなかった歯周病と全身疾患の関連の因果関係を説明するのに合理的な生物学的分子基盤を提供する.
  • 河合 洋介, 小埜 栄一郎, 水谷 正治
    2016 年 54 巻 9 号 p. 640-649
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ(2OGD)は二価鉄を含む水溶性のジオキシゲナーゼであり,低分子化合物からタンパク質やDNAまで様々な生体分子に対して水酸化や脱メチル化など多彩な酸化反応を触媒する.2OGDは細菌から植物,動物まで広く存在しており,ヒトには約60個,各植物種のゲノムには0.5%を占める2OGD遺伝子が存在しているが,進化系統解析に基づく分類命名法は確立されていない.本解説では,生物界全体の2OGDを比較解析し,2OGDの進化と多様性,および代謝活性の有用性について考察する.
  • 山本 祐司
    2016 年 54 巻 9 号 p. 650-656
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者数は増加の一途をたどっており,Ketogenic diet(KD)はその独自性や特殊性から薬剤治療と異なる治療食としての効果が期待されている.また,癲癇やがんへの効果も報告されつつあるが,KDの生体にどのように作用し,影響を与えるかについての生化学的・分子生物学的な報告が少ないことと相まって,KDの使用には疑問が残らざるをえないのが現状といえる.また,KDが生体に及ぼす影響についても多くが事象論にとどまっているが現状である.本稿では,KDの作用メカニズムとして近年の報告を紹介し,その有効性をエビデンスに基づいて示したい.
  • 藤田 泰太郎
    2016 年 54 巻 9 号 p. 657-667
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    真正細菌フィルミクテス門の枯草菌とプロテオバクテリア門の大腸菌の代謝経路を比較すると,解糖系,糖新生,TCAサイクル,ペントースリン酸回路,アミノ酸・塩基合成などの主要な代謝経路の酵素タンパク質は,糖新生にかかわる酵素タンパク質にオルソログの欠落が見られるが,ほぼ保存されている.しかしながら,枯草菌と大腸菌の分子レベルでの代謝制御機作となると両者の間でほとんど保存されていない.筆者は過去半世紀近く,主に枯草菌のカタボライト制御と緊縮転写制御の分子レベルでの解明に取り組んできた.この長年にわたる研究成果をゲノムの塩基配列決定の迅速化とオミックス解析を含む遺伝子発現解析技法の進展とを絡めて解説する.
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