化学と生物
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解説
腸内細菌と宿主との相互作用にかかわる分子機構
細菌の消化管への定着
西山 啓太岡田 信彦
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2020 年 58 巻 11 号 p. 614-620

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抄録

ヒトの消化管には膨大な数の腸内細菌が棲息している.腸内で細菌が単独で棲息していることは少なく,多くは宿主の上皮細胞や粘液に接着したり,細菌同士で凝集塊を形成し共生している.これらの相互作用には,菌体表層のさまざまなタンパク質が接着因子としてかかわる.さらに最近の研究により,粘液と腸上皮の僅か数ミリメートルの空間のなかで,細菌は自らの接着因子の発現を制御し,能動的に定着していることや,腸内細菌が作り出す代謝産物が,ほかの細菌の刺激因子となり接着因子の分泌に影響を及ぼすことが明らかになってきた.これらは細菌がもつ腸内環境への適応機構であり,生体内での細菌の様子を知るうえで非常に重要である.本稿では,Bacteroides属やBifidobacterium属の大腸における接着機構を中心に,最新の知見を紹介したい.

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© 2020 公益社団法人日本農芸化学会
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