2020 年 58 巻 4 号 p. 223-230
タンパク質は自身が働く場に適切に輸送されて初めてその機能が発揮できる.多くのタンパク質は合成の場である細胞質以外に輸送される.タンパク質の生体膜への組み込み反応や,生体膜を超える透過反応は,タンパク質性の輸送装置により進行すると考えられてきた.しかし,近年,大腸菌において,これらの反応が進行するためには既知のタンパク質性の因子のみでは不十分であることが判明し,MPIase(Membrane Protein Integrase)と名付けた糖脂質が積極的に関与していることが明らかになった.本稿では,MPIaseの構造と機能を概説し,その発現制御機構に関する最近の知見を紹介する.