2017 年 73 巻 2 号 p. I_355-I_360
津波氾濫・土砂移動・漂流物移動による複合現象を予測・評価するために津波統合モデルを開発し,狭窄部を有する湾に特有の複合的な津波被害拡大のシナリオを明らかにした.宮城県気仙沼市では,湾狭窄部の侵食により,特に湾奥における津波ハザードが拡大したことがわかった.その結果,船舶の漂流距離は長距離化した.更に,木造家屋の被害実績と数値解析結果に基づき,建物被害関数を推定したところ,土砂移動の影響により200~1800棟(被害実績の5~40%)の木造家屋が流出したと推定された.また,従来手法に基づく津波被害関数では,当該地域における被害規模の推定精度は良好である一方,沿岸付近の被害を過小評価し,内陸では過大評価になることがわかった.