2019 年 75 巻 2 号 p. I_1363-I_1368
今後の巨大津波災害において人的被害を軽減するためには,過去の巨大津波災害におけるハザードマップの活用評価が不可欠である.特に,想定を上回る災害に対する有効性と限界性の検討が必要である.本研究では,東日本大震災時の宮城県のハザードマップの整備および利用状況を整理し,想定浸水域外におけるハザードマップの認知と避難行動を検討した.津波への時間的意識変化を用いて避難状況を整理した結果,ハザードマップの認知は避難行動と有意な関連はなく,津波リスク認知と関連することが定量的に示された.また,気仙沼では「災害イメージの固定化」が発生し,石巻では津波への意識と避難行動が結びつかないという課題が明らかになった.本分析より,外力条件の不確かさを考慮したマルチシナリオ型ハザードマップが有効であると考えられた.