2019 年 75 巻 2 号 p. I_475-I_480
本研究では,混合土砂における粘土の流失による粘土含有率の変化を考慮した漂砂計算手法を提案し,計算手法を組み込んだモデルの再現計算に基づいて粘土の流失特性を検討した.その結果,初期波到達後に急激に巻き上がる粘土の浮遊濃度は再現できていないものの,初期混合土砂の粘土含有率を調整することによって実験とおおむね一致する傾向が確認された.また,粘土の流失が発生する粘土流失活性層の粘土がすべて流失されると,浮遊濃度が時間によって減少する実験と類似した傾向が再現できた.粘土の浮遊濃度は,移動床の沖部と岸側で著しく,混合土砂表面の粘土含有率の減少も同位置で生じることが判明した.粘土含有率の変化を考慮することで,混合土砂における漂砂計算の精度を上げるとともに粘土の流失機構を究明する可能性が示唆された.