2020 年 76 巻 2 号 p. I_1087-I_1092
全世界での熱帯低気圧の発生数は減少傾向にあるが,強度は増大し,最大風速や降水強度も増大する可能性は高まっている.変化する地球環境の中,既往最大履歴に基づいた想定で対策し想定外を繰り返すのではなく,科学的な根拠で確率的に想定する時期に来ている.高潮の生起確率の将来変化を予測するにあたり,統計的な予測手法に関する研究はこれまであまり行われていない.本研究では,全球確率台風モデルと非線形長波モデルを用いて高潮解析を行い,瀬戸内海を対象に高潮簡易予測式を提案し,大規模アンサンブル気候予測データベースd4PDFを用いて高潮の将来変化を評価した.その結果,大阪湾での高潮再現期間を先行研究と比較すると,本研究では再現期間はかなり短くなり,より危険側の結果が得られた.また,これまでの研究と同様に,将来気候では現在気候と比べて高潮リスクが高まる予測結果が得られた.