2020 年 76 巻 2 号 p. I_181-I_186
波浪は単純な風波やうねり以外にも多峰性方向スペクトルを含む複雑な海象条件を示すが,海象条件の違いが波浪モデルの再現精度への影響に関する知見は少数の事例研究に限られている.本研究では,現地観測および波浪モデルの方向スペクトルを対象に,多峰性を考慮した海象条件の波浪モデルの再現精度への影響評価を行った.まず,観測とモデルで方向スペクトルの多峰性と風波・うねりの寄与を比較したところ,大幅な乖離を示す地点は少なくモデルで概ね再現可能であった.次に海象条件と波浪モデルの再現精度の対応を確認したところ,太平洋側で特徴的な周期のRMSEの増加が,単峰性のうねりおよび多峰性波浪場のスペクトルの再現精度に起因する可能性が示された.