2020 年 76 巻 2 号 p. I_433-I_438
米国西海岸は津波リスクの非常に高い地域であり,津波堆積物調査が盛んに行われている.その内太平洋沿岸で発見された津波堆積物はそのほとんどがカスケディア沈み込み帯を波源とする津波によるものである一方,セイリッシュ海に面するディスカバリー湾ではそれ以外の波源と思われる津波堆積物が見つかっている.これらの津波堆積物の研究を進めることでカスケディア沈み込み帯以外を波源とする津波によるリスクを把握することが期待されている.そこで先駆的研究として本研究では,堆積物が確認されている1964年アラスカ地震津波によるディスカバリー湾における地形変化の特徴を津波土砂移動計算を用いて解析した.その結果,ディスカバリー湾においては,1964年アラスカ地震津波による地形変化は,湾地形と津波の減衰により生じていることが判明した.また,土砂移動が沿岸から干潟の狭い範囲に限られており,深海域からの土砂供給や深海域への土砂流出が生じていない可能性が示唆された.