海の研究
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原著論文
三陸女川湾における水系分布とその季節変動,特に河川系水について
五味 泰史 高橋 大介遠藤 宜成
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2021 年 30 巻 6 号 p. 277-293

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抄録

三陸女川湾において,2000 年4 月から2017 年2 月の間に実施されたモニタリング調査により得られたデータを用いて,水系分布とその季節変動について調べた。本研究では,女川湾の海水をHanawa and Mitsudera(1987)で定義された6 つの水系および沿岸水(岸近くには存在するが,その沖合には存在しない海水)のいずれかに分類した。水系分類の結果を用いてモード水系を求めたところ,その分布は季節により大きく変動し,秋の下層および冬の全層で津軽暖流水系,春の下層で親潮水系,春から夏の表層で沿岸水が卓越することが明らかになった。女川湾に出現した沿岸水は,沖合の海水に比べて低塩分および/あるいは低密度で,おもに4 月から10 月の表層に分布していたことから,湾内の表層水が河川水と混合することで形成されたものと考えられた。また,女川湾湾口部の表面塩分と追波湾に淡水を供給する北上川の流量との関係から,女川湾に出現した沿岸水の一部は湾外から流入してきたものであることが示唆された。

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© 日本海洋学会, 2021年
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