海の研究
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30 巻, 6 号
海の研究
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総説
  • 中野 知香, 吉田 次郎
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 6 号 p. 255-275
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    鉛直渦拡散係数の強さは海洋大循環の構造に寄与し,ひいては気候変動に影響を及ぼすことが知られている。そのため鉛直渦拡散係数の全球的な推定が求められているが,限られた航海時間で推定に用いる乱流(粘性散逸率ε)の直接観測を重点的に行うことは難しい。また,観測を行えたとしても乱流のエネルギー源となる風・潮汐・内部波の砕波・海面冷却など多岐にわたる現象を理解するとともに,膨大な量の乱流自身を特徴付けるパラメータについて理解しておく必要があるため,統一的に理解しづらいのが現状である。そこで本総説では,海洋乱流現象を解析する上で用いられる数mm から数10m に及ぶ長さスケール,無次元数の持つ意味について整理するとともに,特に船舶観測データを用いた海洋乱流エネルギー散逸率の推定方法について解説を行う。

原著論文
  • 五味 泰史, 高橋 大介, 遠藤 宜成
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 30 巻 6 号 p. 277-293
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    三陸女川湾において,2000 年4 月から2017 年2 月の間に実施されたモニタリング調査により得られたデータを用いて,水系分布とその季節変動について調べた。本研究では,女川湾の海水をHanawa and Mitsudera(1987)で定義された6 つの水系および沿岸水(岸近くには存在するが,その沖合には存在しない海水)のいずれかに分類した。水系分類の結果を用いてモード水系を求めたところ,その分布は季節により大きく変動し,秋の下層および冬の全層で津軽暖流水系,春の下層で親潮水系,春から夏の表層で沿岸水が卓越することが明らかになった。女川湾に出現した沿岸水は,沖合の海水に比べて低塩分および/あるいは低密度で,おもに4 月から10 月の表層に分布していたことから,湾内の表層水が河川水と混合することで形成されたものと考えられた。また,女川湾湾口部の表面塩分と追波湾に淡水を供給する北上川の流量との関係から,女川湾に出現した沿岸水の一部は湾外から流入してきたものであることが示唆された。

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