海の研究
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風成循環場におけるデータ同化手法の比較
高山 勝巳広瀬 直毅久保田 雅久
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2003 年 12 巻 5 号 p. 461-476

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抄録

データ同化手法は,最適手法と経験的手法に大別できる。前者は同化結果の統計的・力学的最適性が保障された同化手法であり,後者は誤差や力学の考慮が不十分な手法である。本研究では,最適手法と経験的手法による風成循環場の推定精度について調査した。矩形海域を設定し,1.5層reduced gravity modelを用いて数値計算を行い,衛星高度計を模した観測データの同化実験を行った。比較に用いた同化手法は,時間定常カルマン フィルタと直接挿入法である。直接挿入法については,観測データをモデル格子点に内挿した上で同化する方法に加え、観測点上で直接同化する場合も実験した。観測データの誤差に空間的な相関がある場合,カルマン フィルタと直接挿入法による同化精度に顕著な差が現れた。格子点で同化する直接挿入法で最適重み係数を用いたとき,観測された状態量についてはカルマン フィルタと同等の精度を持ちうるが,非観測の状態量はカルマン フィルタほど誤差が小さくならなかった。観測点で同化する直接挿入法の解析誤差は格子点で同化する方法の解析誤差よりも大きくなったが,逆に前者の観測量の予報誤差に関しては後者の誤差よりも小さくなった。経験的手法から最適手法に近い推定結果を得ることも可能だが,最適な重み係数を決定することは困難である。

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© 日本海洋学会
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