2023 年 49 巻 5 号 p. 133-141
本報では,和柑橘の一種であるユズ(Citrus junos)の果汁圧搾残渣を対象とした超臨界CO2抽出において,酵素前処理を行うことで,天然精油をより効率的に抽出することを目的に検討を行った.酵素前処理として,酵素処理時間,酵素水濃度,酵素種を調査し,1 h,酵素重量比1倍の加水,Pectinase主体の複合酵素であるSclase™ Aの利用が最適であるとわかった.超臨界CO2抽出は,温度は40°C, 圧力は25 MPaとし,240 minの処理を行った.数値モデル解析としてSovováが提唱したモデルを適用し,酵素前処理効果が固体内物質移動係数ksや対象抽出物の表面存在率xp/x0の値に表れていることが定量的に明らかとなった.得られた天然精油は,更年期女性への被験(唾液分析ならびにアンケート調査型ストレス評価法)によりその効果を明らかとした.さらに,抽出残渣の有効利用性を評価するべく,マウスを使った抗アレルギー作用評価を行い,残渣の有効利用性を示すことができた.