化学工学論文集
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49 巻, 5 号
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編集ノート
移動現象,流体工学
  • 安井 詩織, 伊奈 卓哉, 服部 大輔, 下河邊 一樹, 原口 蘭, 古川 陽輝, 加藤 禎人, 高 承台
    原稿種別: 報文
    2023 年 49 巻 5 号 p. 109-113
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり

    加藤ら(Kato et al., 2015a, 2015b)により,3S(Simple, Speedy, Stable)性能を備えた新しいホームベース(HB)翼を開発した.本稿では,HB翼を試験管用撹拌子への適用および実機スケールへのスケールアップを試みた.試験管に最適なHB型撹拌子を開発し,通常の撹拌子よりも混合時間が短いことを見出した.さらに,著者らは,パイロットスケールから実験室スケールまでのHB翼の混合時間を測定した.この結果から,HB翼は,翼形状を変更することなく,実験室規模から工業規模に効率的にスケールアップできることが示された.

  • 高橋 理輝, 岩田 真依, 古川 陽輝, 加藤 禎人, 加藤 好一, 根本 孝宏, 吾郷 健一, 高 承台
    原稿種別: 報文
    2023 年 49 巻 5 号 p. 114-118
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり

    通気撹拌用の大型2枚パドル翼GD220を開発し,撹拌所要動力,混合時間,通気動力を測定することによってその性能を評価した.GD220の動力数は,既存の大型パドル翼よりも小さく,同一の単位体積当たりの撹拌所要動力であれば回転数を増加させることが可能である.混合性能は同社の類似の大型パドル翼MR203と同等の性能だった.また,翼先端を後退させ,切り抜きを設けているため,通気撹拌の際,キャビティを形成しにくくなり,通気動力が低下しないことがわかった.

  • 藤堂 里美, 門叶 秀樹
    原稿種別: ノート
    2023 年 49 巻 5 号 p. 119-122
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり

    前報(Marui and Tokanai, 2021)では,粗大粒子を混入した撹拌槽内壁の熱伝達実験を行い,低Re域において粒子の槽底への堆積による伝熱の劣化を,また高Re域において粒子分散による熱伝達の促進を確認した.本研究では,この熱伝達の抑制を解消するべく,前報よりも混入させる粒子の体積分率を小さくし,直径を大きくした条件で実験を行った.その結果,低Re域では粒子の堆積が回避され,熱伝達が抑制されないことがわかった.一方,高Re域では直径の大きな粒子の撹乱効果によって熱伝達が促進された.さらに,前報で示したデータを含むすべての熱伝達係数は,前報で導出した相関式のパラメータを修正することで良好に表示できることを確認した.

分離工学
  • 高橋 寛斗, 福地 翔哉, 中本 莉緒, 片桐 誠之
    原稿種別: 報文
    2023 年 49 巻 5 号 p. 123-128
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり

    カニ殻由来キトサンと貝殻焼成粉末の併用による濁液の浄化を試み,濁質の凝集沈殿だけでなく,殺菌とウイルス不活化効果が付与され,衛生的に安全で清澄な処理液が得られることを明らかにした.細菌とウイルスの不活化は酸化カルシウムが主成分の貝殻焼成粉末による効果で,濁質となる粘土粒子,細菌,貝殻焼成粉末はカチオン性ポリマーであるキトサンにより凝集フロックを形成し速やかに沈降した.貝殻焼成粉末を添加することで微細粒子がフロックに取り込まれやすくなり,より少量のキトサンで高清澄液が得られるという併用による効果が確認された.提案手法は,水浄化のための添加剤がカニ殻と貝殻を原料とすることから食品廃棄物の有効利用に繋がり,また操作が撹拌のみというシンプルで特殊な装置を必要としないことから国を問わずどこでも浄化が行えるといった利点があり,不衛生な環境において安全な水を得る手法として有用である.

  • 大田 昌樹, 松田 修汰, 平賀 佑也, 渡邉 賢, 猪股 宏
    原稿種別: レター
    2023 年 49 巻 5 号 p. 129-132
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり

    液体クロマトグラフィーや超臨界流体クロマトグラフィーにおけるクロマトグラムや,破過曲線の計算には,通常,移流拡散モデルによる偏微分方程式に基づく解法が採用されている.今回,著者らはこれとは別に,化学工学的物質収支と熱力学平衡論に基づくクロマトグラムおよび破過曲線の計算法を新たに開発したので報告する.この計算法では,溶質を系内に注入する際にインパルス入力とする際はクロマトグラムを,ステップ入力とする際は破過曲線をそれぞれ計算することができる.この新しい計算法は,吸着等温式の変更も許容するものであり,化学工学熱力学的平衡論に基づくモデルとしてその応用展開が期待される.

  • 平賀 佑也, 吉瀬 菜南, 鳥居 洸太, 戸田 雅子, 末吉 真由美, 大橋 朋貢, 渡邉 賢
    原稿種別: 報文
    2023 年 49 巻 5 号 p. 133-141
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり

    本報では,和柑橘の一種であるユズ(Citrus junos)の果汁圧搾残渣を対象とした超臨界CO2抽出において,酵素前処理を行うことで,天然精油をより効率的に抽出することを目的に検討を行った.酵素前処理として,酵素処理時間,酵素水濃度,酵素種を調査し,1 h,酵素重量比1倍の加水,Pectinase主体の複合酵素であるSclase™ Aの利用が最適であるとわかった.超臨界CO2抽出は,温度は40°C, 圧力は25 MPaとし,240 minの処理を行った.数値モデル解析としてSovováが提唱したモデルを適用し,酵素前処理効果が固体内物質移動係数ksや対象抽出物の表面存在率xp/x0の値に表れていることが定量的に明らかとなった.得られた天然精油は,更年期女性への被験(唾液分析ならびにアンケート調査型ストレス評価法)によりその効果を明らかとした.さらに,抽出残渣の有効利用性を評価するべく,マウスを使った抗アレルギー作用評価を行い,残渣の有効利用性を示すことができた.

生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 長森 英二, 佐藤 貴志
    原稿種別: 報文
    2023 年 49 巻 5 号 p. 142-148
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり

    kLa値(酸素移動容量係数)は培養槽のスケールアップ指標として広く利用されており,その測定には従来から複数種の測定法が用いられてきた.中でも静的方法は菌体培養を必要せず,測定条件を柔軟に変更でき,繰り返し測定も容易であるため非常に簡便である.一方で従来のガルバニ電池式溶存酸素センサーでは応答遅れが顕著で,実培養で使用されるような高いkLa値の培養条件の評価が不可能であった.今回,応答速度が顕著に速い光学式溶存酸素センサーを用いることで300 h−1以上の高いkLaが静的方法により測定可能であることを明らかにした.さらに全くの同条件(同一容器,同一撹拌条件など)にて各種のkLa測定法との相関付けを行った.

環境
  • 渡部 吉規, 小林 信介, 板谷 義紀, 坂東 芳行, 増井 龍也
    原稿種別: 報文
    2023 年 49 巻 5 号 p. 149-157
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり

    堆肥化発酵熱を堆肥化物の加温に利用することを目的に2つの小型発酵槽を連結した実験室レベルの連続型堆肥化装置を作製し,1つ目の発酵槽から排出された比較的高温の堆肥化排ガスを熱交換することなく2つ目の発酵槽に直接導入した.堆肥化物の温度変化,排出される主な成分(水,二酸化炭素およびアンモニア)量および堆肥化前後の堆肥化物成分を測定し,空気を供給した通常の堆肥化と比較することで堆肥化排ガスが堆肥化に及ぼす影響について検討した.堆肥化排ガスを導入した装置では,空気を供給した場合と比較して以下のような違いが確認された.堆肥化物の最高温度は高くなり装置内の高さ方向の温度分布は均一に近くなった.また,装置から排出される水の排出量は減少傾向がみられ堆肥化物の乾燥が抑制さるとともに高さ方向の含水率分布が小さくなった.二酸化炭素の排出量は約10%増加し,アンモニアは50%以上減少した.堆肥化物の成分については炭素の除去率は1.1倍,窒素は1.4倍高くなった.よって,堆肥化物の有機物分解が促進された.

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