2019 年 67 巻 1 号 p. 32-35
ノーベル賞は,大きな賞金の額と,推薦を国際的に集める選考過程に特徴がある。同賞の最初の授賞は1901年に行われたが,この年すでに,日本の医学者,北里柴三郎の名前が候補者の中にあった。ノーベル賞を初めて受賞した日本人は湯川秀樹であったが(物理学賞,1949年),それ以前から同賞と日本の関わりは始まっており,人工癌の発生に成功した山極勝三郎のように,1920年代に受賞に近づいた者もあった。湯川,朝永振一郎(1965年)と続いた理論物理学者の受賞は,20世紀初頭の物理学の変革の産物であるとも解釈できるが,その影響は日本人初の化学賞を受賞した福井謙一の研究にも及んでいると考えられる。