今回の学習指導要領改訂は,子供たちに未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成することを目指している。資質・能力を三つの柱で整理し,それらを育成するために「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた指導改善を促進し,学校全体での取組としようとするものである。理科においては,問題解決の活動や科学的に探究する活動を充実し,学習の質を高めるための改善をしている。
小学校・中学校理科の「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」を柱とする内容の構成表に加え,新学習指導要領解説では,思考力・判断力・表現力等及び学びに向かう力,人間性等に関する主な記述を表にまとめ,育成を目指す資質・能力を系統的に示した。また,どのような学習過程で資質・能力を育むのかを高等学校の基礎科目の例で示したが,基本的には,小学校及び中学校においても同様の流れで学習活動を捉えることが必要である。
新たな学習指導要領が示され,育成を目指す資質・能力が三つの柱で整理された。学校教育を通して「どのような子ども」を育て,理科が担うのは「どの部分」であるのかを,一層意識して指導に当たることが大切となる。また,小学校理科の目標における「見方・考え方」に係る表現が,「科学的な見方や考え方を養う1)」から「理科の見方・考え方を働かせ2)」と改訂された。指導者は,子どもがどのような「見方・考え方」を働かせて自然の事物・現象を捉えようとしたのかを見取るとともに,子どもの考えに沿った指導を行い,「主体的・対話的で深い学び」を実現することが大切である。本稿では,そのような指導について具体例を基に解説する。
平成29年度に告示された中学校学習指導要領においては,三つの資質・能力の育成を目指していることが示された。これらの資質・能力の育成のためには「主体的・対話的で深い学び」を実現し,質的な改善が必要であることが示唆されている。「主体的・対話的で深い学び」は「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の三つの視点からなっており,これら三つの視点は子供の学びの過程においては相互に影響し合いながら一体として実現されるものの,それぞれ固有の視点として捉えることが重要であると指摘されている。
そこで本稿においては,中学校第2学年「化学変化と熱」の授業実践を通して,上記三つの視点が授業実践の中でどのように具現化されているかを子供の記述から分析によって明らかにした。
フロンティア軌道論は福井謙一博士らによって1952年に提案された反応理論である。化学反応はフロンティア軌道(HOMO,LUMO)におもに支配される。福井博士はさらに1964年に軌道の対称性が反応を支配することを発表した。フロンティア軌道理論は,正電荷と負電荷の静電引力を基礎に置く有機電子論から,分子の中の電子の波動性を表している軌道に基づく反応論へ転換する先駆である。もとは分子間の反応に対して提案された理論であるが,分子内の反応へも展開され,分子の安定性にも応用できる。
フロンティア軌道論の発表からもう半世紀をはるかにこえ,高校や大学での化学教育に今以上に軌道を導入することは可能であり,その試みが期待される。
ノーベル賞は,大きな賞金の額と,推薦を国際的に集める選考過程に特徴がある。同賞の最初の授賞は1901年に行われたが,この年すでに,日本の医学者,北里柴三郎の名前が候補者の中にあった。ノーベル賞を初めて受賞した日本人は湯川秀樹であったが(物理学賞,1949年),それ以前から同賞と日本の関わりは始まっており,人工癌の発生に成功した山極勝三郎のように,1920年代に受賞に近づいた者もあった。湯川,朝永振一郎(1965年)と続いた理論物理学者の受賞は,20世紀初頭の物理学の変革の産物であるとも解釈できるが,その影響は日本人初の化学賞を受賞した福井謙一の研究にも及んでいると考えられる。
食品に必要とされる要素として「安全」・「健康」・「おいしさ」・「価格」がある。私たちの研究室では「おいしさ」を食品構造から追究し,食品構造の制御によりおいしい食品をデザインする『食品構造工学』の確立を目指している。特に,食品のおいしさは咀嚼による「変化」であるという立場から,望むおいしさの実現と効率的なものづくりに貢献したいと考えている。ここでは特にオノマトペ(擬音語・擬態語)として表現されるおいしい食感(とろ~り)とスイーツ(プリン)の破壊構造との関係について述べる。