日本東洋医学雑誌
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臨床報告
「上熱中寒」から展開する黄連湯の応用
~30例の有効症例から~
土倉 潤一郎後藤 雄輔吉永 亮井上 博喜矢野 博美犬塚 央中川 幹子田原 英一
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2019 年 70 巻 3 号 p. 205-210

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抄録

一般に黄連湯は上部消化器症状に用いられるが,「上熱中寒」を参考にさまざまな疾患に使用した。有効30例について検討した結果,「上熱」の症候として「舌の黄苔」が29/30例,「中寒」の症候として「温かい飲食物を好む」が27/30例で最も多くみられた。また,無効群との比較において,有効群では「温かい飲食物を好む」と「冷たい飲食物で消化器症状が悪化する」を合わせた「胃腸の冷え」が29/30例(p =0.047),「上下部消化器症状」が29/30例(p =0.014)認めており,いずれも有意に多かった。「上熱」の症候は「舌の黄苔」,「中寒」の症候は「胃腸の冷え」が最も参考になること,黄連湯証に上部消化器症状は必須ではないが,上下部いずれかの消化器症状を伴い,さらには皮膚疾患や睡眠障害も存在する可能性が示唆された。

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© 2019 一般社団法人 日本東洋医学会
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