感染症学雑誌
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サルモネラ菌症の予防に関する基礎的研究 (3)
S.enteritidis SPAのマウスに対する感染防御効果について
神谷 和人杉原 久義田中 哲之助
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1981 年 55 巻 11 号 p. 802-811

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抄録

S.enteritidis2547株 (SPA強力産生株) の培養濾液であるSPAで1回免疫されたマウスは同株の100LD50の攻撃に耐えるが, SPA非産生株である2822株ではそのような効果は見られない.2547株SPAで免疫されたマウスの血清を正常マウスに移入すると, このマウスは10LD50の菌量の攻撃に耐え感染死が防御される.この免疫血清をSPAで吸収すると防御効果は消失する.SPA免疫血清中には0抗体, H抗体はほとんど含まれておらず, また同じO, H抗原構造をもつ菌でも株によつて防御性が異なることから, 感染防御抗体は0抗体, H抗体とは異なるものと思われる.
このような感染防御性は加熱死菌体, ホルモルワクチンを用いてもSPA産生性とよく平行することが認められた.
SPAによる防御効果は免疫3日目には出現し, 180日後でも持続する.しかし免疫血清の受身移入による防御効果は90日では消失している.このことよりSPAによる感染防御は体液性抗体のみでなく, 他の因子も関与していることが判る.
SPA免疫マウスの腹腔細胞を用いてMITを行つたところ, マクロファージの遊走が阻止され, 細胞性免疫の関与が示唆された.
SPA免疫マウスを強毒菌で攻撃し, 血液, 臓器中の菌数を調べたところ, 攻撃菌はやや増加するが, 徐々に減少し遂には消失する.しかし非産生株ではこのような効果はなく, 菌数は次第に増加し, マウスは死亡する.

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