1981 年 55 巻 11 号 p. 812-818
最近10年間に岐阜県内で発生した黄色ブドウ球菌食中毒24事例から分離された分離株のコアグラーゼ型はII, III, VIおよび靱型に限局された.にぎりめしを原因食とする13事例のうち養護施設M学園で発生したブドウ球菌性食中毒について検討した.
原因食にぎりめしからコアグラーゼVI型菌が分離されたが, 調理材料, 調理器具等に異常が認められなかつた.にぎりめしを調理した職員の手指, うがい液から原因食からの分離株と同コアグラーゼ型の黄色ブドウ球菌が分離された.これらの分離株は米飯中で良好な増殖を示した.原因食にぎりめしの汚染源は調理した職員に棲息する黄色ブドウ球菌であろうと推定された.にぎりめし調製時における米飯へのブドウ球菌汚染の機序について考察を加えた.