感染症学雑誌
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健康学童のAnti-streptococcal polysaccharide値 (ASP値) についての検討
中島 邦夫奥山 道子菅原 猛行奥田 清
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1985 年 59 巻 9 号 p. 883-891

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抄録

溶血レンサ球菌に対する血清抗体としては, 従来からASOを初めとする菌体外産物に対する測定が広く行われている.今回, 菌体成分に対する抗体として, A群溶血レンサ球菌 (以下, A群菌と略す) の細胞壁成分である多糖体に対する抗体 (antistreptococcal-polysaccharide: 以下ASP) がマイクロタイター法によって, 検査室レベルで容易に測定できる方法が開発され, 検討の機会を得たものである.
1979年4月から1983年1月までの間に, 大阪市立少年保養所入所児及び大阪市内1小学校児童の計538名の小・中学生の血清を採取し, ASP, ASO, ASKの三種の抗体値を測定した.
ASP値の平均値は6~9歳で64倍, 10~12歳で43倍, 13~15歳で50倍であり, 32倍と64倍の間に正常値と異常値の境界値があるものと考えられた.3種の抗体の相関関係については, ASP-ASO, r=0.214, ASP-ASK, r=0.103, ASO-ASK, r=0.705であって, ASP-ASO, ASP-ASKの間には相関は認められず, ASO-ASKの間にやや相関を認めた.
大阪市内1小学校学童109名について血清抗体値を測定した時点より過去1年間に6回にわたって検索を実施して得た咽頭分離溶血レンサ球菌のA群菌と抗体値の関係を相互に比較した.菌検出回数が増すと, 3種の抗体値のいずれについても抗体値が高値をとる割合が多くなった.またA群菌を1回以上検出した50例についてASO, ASKは23例 (46.0%) の異常値をみたが, ASPは18例 (36.0%) の異常値をみたに留まった.また, A群菌陽性例のうちASO値が200倍以下の低値であった28例については, ASPは10例 (38.5%) の異常値をみ, ASKは7例 (25.0%) の異常値をみ, ASPの方が若干優っていた.

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