感染症学雑誌
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全国的にみた溶血レンサ球菌の疫学的研究
7府県の小・中学生の咽頭分離の溶血レンサ球菌を対象にして-第1編検出率の比較
中島 邦夫奥山 道子奥田 清
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1985 年 59 巻 9 号 p. 892-904

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抄録

1983年4月終りから同年6月初めに至る約1ヵ月半の間に, 北海道と沖縄を除く東北から九州に至る7地方の小・中学生の咽頭の溶血レンサ球菌の検索を実施した.対象は秋田, 新潟, 埼玉, 大阪, 島根, 佐賀の6府県の小学生 (1~6年生) および高知の中学生 (1年生) である.検出率の比較はA, B, C, G群菌について行った.培地作製から検体採取, 培養, 同定まで出来る限り条件を一定にした.培地は大阪市立少年保養所で作製したN-O培地を使用し, 現地に於て咽頭粘液を滅菌綿棒で採取し直接塗抹を行った.直ちに大阪まで運搬し, 培養および同定は大阪市立少年保養所に於て実施した.その結果, 菌検出率は従来の報告よりも高率であった.群別にみると, A群菌は最も多く分離されたが, B群菌はA群菌に次いで高率にみられた.G群菌は若干数ながら殆んどの学校, 学級に於て分離された.C群菌は極めて少なく, 皆無の学校, 学級もみられた.また, 各小・中学校とも学級によって検出率にかなりの差異があり, 最高と最低で2~3倍の開きがみられた.性別では, A群菌は男子に, B群菌は女子に, それぞれ多く検出された.B群菌の検出率は全般的にみた場合, 小学1年生が最も低く, 高学年になるにつれて上昇の傾向をみせ, 特に小学6年生, 中学1年生に於て著明であった.rural area (秋田, 島根, 佐賀) はurban area (新潟, 埼玉, 大阪) よりも検出率が高率であった.

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