感染症学雑誌
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全国的にみた溶血レンサ球菌の疫学的研究
7府県の小・中学生の咽頭分離の溶血レンサ球菌を対象にして-第4編薬剤感受性
中島 邦夫奥山 道子奥田 清
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1985 年 59 巻 9 号 p. 921-934

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抄録

1983年4月下旬から同年6月上旬に至る約1ヵ月半の期間に北海道と沖縄を除く東北から九州に至る7地方, 即ち秋田, 新潟, 埼玉, 大阪, 島根, 佐賀の小学生 (1~6年生) 及び高知の中学生 (1年生) の咽頭から分離した溶血レンサ球菌のうちA群菌413株, B群菌197株, C群菌12株, G群菌63株について薬剤感受性を測定した.PC系薬剤ではPCG, ABPC, AMPC, ACPC, SBPCについて検討したがPCGが各群菌に対して最も優れたMIC値を示し, SBPCが最も劣っていたが耐性菌はなかった.ただ, B群菌の感受性は各薬剤ともA, C, G群に比し劣っていた.cephem系薬剤はCER, CET, CEZ, CEX, CPZ, LMOXについて検討したが各群ともCERが最も優れたMIC値を示しLMOXが最も劣っていた.PC系同様にB群菌のMIC値は劣っていたが, 特にLMOXでは顕著であった.macrolide系薬剤はEM, OL, JMを検討したがEMが比較的良好であった.耐性菌 (≧25μg/ml) は, 6.7%(28株), 8.7%(36株), 8.5%(35株) に出現したが高度耐性菌 (100μg/ml,≧200μg/ml) は, 4.8%(20株), 4.6%(19株), 5.8%(24株) であった.TCはA, B, G群についてはバラッキが著しく二峰性であり耐性菌, 高度耐性菌を認めた.CPはA, B群にバラッキと耐性菌, 高度耐性菌を認めた.
A群型別ごとにみた薬剤感受性の検討ではT-12型にかなり高い比率でmacrolide系薬剤に耐性菌と高度耐性菌を認めたがT-11型に1株高度耐性菌を認めた.TCに対しては, 耐性菌をT-1型, T-3型, T-4型, T-12型, T-13型, T-28型に認め高度耐性菌をT-4型とT-12型に認めた.CPについては耐性菌をT-12型に高度耐性菌をT-11型とT-12型に検出した.耐性パターンについてはTC, CPの2剤又は1剤とmacrolide系薬剤との組み合せがA群T-12型に多く, T-11型に1株とB群III型に1株検出された.
耐性T-12型の出現頻度は秋田と大阪が高く全般には80.2%であったが島根は44.4%と低率であった.macrolide系薬剤耐性のみについて検討すると秋田が最高で北高南低の傾向がみられた.

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