感染症学雑誌
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Icterohaemorrhagiae群レプトスピラに対するモノクローナル抗体の作製とその性状の解析
特にserovar smithiならびにserovar naamを中心として
佐田 栄司
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1988 年 62 巻 11 号 p. 944-958

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抄録

Leptospira interrogans serogroup Icterohaemorrhagiae の血清学的性状を詳細に解析する目的で, serovar smithi Smith 株とserovar naam Naam株に対するモノクローナル抗体を細胞融合法により作製し, それらの性状について検討した。まず, 抗Smith抗体18系統, 抗Naam抗体4系統の計22系統のモノクローナル抗体を作製し, 顕微鏡的凝集反応によって, それらの血清学的性状を解析した.その結果, 免疫原としたそれぞれの株に特異的に反応する抗体としてSMIMA-1, NAAMA-1が作製されたほか, serovar weaveri, sarmin, tonkiniを除いた各株に幅広く反応し, 群特異性と考えられる抗体, およびそれらの中間的反応を示す抗体が得られた.次いで, これらの抗体を用いて, serogroup Icterohaemorrhagiaeに属するレプトスピラの血清学的関係を解析した結果, 次の3亜群に大別された.すなわち, (1) 免疫原としたserovar smithiに強い類属反応を示す血清型としては, serovar monymusk, birkini, mankarso, icterohaemorrhagiae, copenhageni, ndambari, ndahambukuje, budapest;(2) ほとんど類属反応を示さない血清型はserovar weweri, samnin, tonkini;そして, (3) その中間的性状を示す血清型として, serovar gem, bogoere, mwogoto, naam, dakotaに分けられた.さらに, 強い類属反応を示す亜群では, 反応様式の違いによって, 免疫原とした卑清型を含めると, serovar smithi, monymusk, birkini, mankarso, icterohaemorrhagiae, およびserovar copenliageniのうち白水株が類似の反応を示し, 他は, serovar copenhageni のうちM20株と芝浦株, serovar ndambari, ndahambukuje, budapest が類似の反応を示した.また, serovar naamに類属反応を強く示す血清型は, serovar monymusk, birkiniでeserovar icterohaemorrhagiae がこれらに次いで反応を示した.
次いで, 免疫プロット法を用いた抗原解析により, それらのモノクローナル抗体のうち15系統の抗体に反応する抗原は, それらの血清学的反応性に関係なく分子量約23kDの部位に幅広いバンドとして認められた.そして, それに一致するバンドはCoomassie blue染色では染色されず, 銀染色では染色され, また, 熱処理, proteinaseK処理では耐性を示し, 過ヨウ素酸処理によって消失することにより, リボ多糖体と推定された.

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