1988 年 62 巻 11 号 p. 959-966
内臓真菌症とくに肺真菌症の発症要因を解明するため, 当内科で経験した剖検例の臨床病理学的検討を行った.1981年から1987年までに行われた剖検182例中42例 (23.1%) に日和見肺真菌症が認められた.基礎疾患別では, 造血器悪性腫瘍71例中30例 (42.3%), 固型悪性腫瘍79例中7例 (8.9%) と前者で高率であった.悪性リンパ腫よりも白血病で高率であり, 固型腫瘍では肺癌で高率であった.菌腫別では, アスペルギルス症18例, カンジダ症15例, 重複真菌症6例, クリプトコッカス症2例, ムコール症1例とAspergillusとCandidaが多く, 重複真菌症ではこれらとMucorの組み合わせが多かった.薬剤との関係では, 抗生物質, ステロイド剤, 抗腫瘍剤が68%で併用投与されていた.生体防御能の検討では, 低栄養, 末梢血好中球およびリンパ球減少, 低γ-グロブリン血症が認められたが, とくに好中球減少が著明であった.
以上より, 日和見肺真菌症の発症要因として抗生物質投与に伴う菌交代現象による真菌の増殖, ステロイド剤, 抗腫瘍剤の粘膜傷害による真菌の組織内侵入が重要であること, 侵入した真菌の防御因子として好中球がとくに重要であることが示唆された.