1992 年 66 巻 4 号 p. 441-447
びまん性汎細気管支炎 (DPB) をはじめとする慢性下気道感染症にエリスロマイシン (EM) が効果的であることは, よく知られた事実である. 今回我々はEM投与前後に気管支肺胞洗浄を施行したDPB11例について, 気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中の好中球遊走因子 (NCF) の変動を検討し, そのうち6例については臨床的な検査所見の改善との相関について検討した. EM投与前のBALF中のNCF活性の平均は53.05±10.65%であり, 投与後には30.17±7.84%と有意な低下を認めた (p<0.001). またEM投与前後の呼吸機能所見の変化は,%VC, FEV1.0, RV/TLCにおいて有意な改善を示し (p<0.001), FEV1.0%, V25においてもそれぞれp<0.01, p<0.05と有意な改善がみられたが, そのほかのパラメータについては, 改善を認めなかった. 血液ガス所見についても, PaO2, AaDO2においてP<0.001と有意な改善を認めたが, PaCO2については変化を認めなかった. つぎにこれらの検査所見とBALF中のNCF活性との関係を検討した. 呼吸機能検査のうち%VC, RV/TLCとは相関する傾向を認めたが, 有意ではなかった. しかし, EM投与前後の血液ガス所見の検討では, 投与前後のPaO2の改善率とNCF活性の低下に有意な相関を示した (r=0.857, p<0.05). このことより, EMはBALF中の好中球遊走活性を抑制し, 気道内への好中球の集積を抑制することで, 喀疾を減少せしめ, 低酸素血症の改善を促し, DPBの病態の改善に深く関わっている可能性が示唆された.