1987年から1990年までの3年間に, と畜場や動物病院などで胃腸炎と診断されたウシ96頭, ブタ89頭, イヌ67匹, ネコ18匹からVero毒素産生性大腸菌 (Verocytotoxin-producing Escherichia coli, VTEC) の分離を試みた. その結果, ウシ11頭, ネコ1匹からVTECが分離された. 分離株が産生するVero毒素の毒素型別をbead-ELISAとオリゴヌクレオタイドプローブを用いたコロニーハイブリダイゼーション試験により行ったところ, ウシ由来株には従来報告されているVT1, VT2, VT2vhを産生する菌株のほかに, これらのVero毒素とは異なる2種類のVero毒素 (仮りにVTx, VTyと名づけた) を産生している菌株が含まれていることがわかった. また, ネコ由来株はVTy産生株であった. 分離した菌株の血清型別を行ったところ, 従来ヒトの出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群の原因菌の血清型と同一の菌株が含まれていた. 以上の結果から, すでにカナダやアメリカ合衆国において報告されているように, わが国においても, 家畜や愛玩動物がヒトのVTEC感染症の感染源になる可能性があると考えた.
