感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
産婦人科手術における腸球菌の検出状況および病原性に関する検討
久保田 武美岩佐 剛斉藤 英樹金子 隆弘高田 道夫小栗 豊子
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 66 巻 4 号 p. 470-476

詳細
抄録

近年, 臨床材料からのEnterococcws分離率の増加が指摘されているので, 産婦人科手術症例におけるEnterococc郷の検出率を検討するとともに, 1985~1990年の期間中の本菌による術後感染症の実態について調査した.
1) 126例の腹式単純子宮全摘例を対象として術前と術後3日目の膣内 Enterococc 循の検出率を比較した.感染予防の目的でPIPC, CEZ, CEPR, CMZ, LMOXを点滴静注した群では術後において検出率は上昇したが, 抗生剤非投与群においても検出率は上昇した.一方, CP膣錠を用いた群では検出率は下降した.ただし, 本菌の術後における増加はセフェム系を中心とする薬剤の影響であるという統計学的証明はなされなかった.
2) Entmcocc鋸による術中汚染を88例の腹式単純子宮全摘例について調べた結果では, その2.0%に手術野より本菌を分離したにすぎなかった.
3) 広汎子宮全摘後 (n=30) の骨盤死腔経膣ドレーン中の細菌培養を試みると, 本菌陽性症は86.7%にも達していた.
4) 術創感染例25例中の20%に本菌が分離されたが, これら分離菌は起炎菌とはみなされなかった.子宮頚部腺癌Ib期の治療中に本菌による術後敗血症を経験した.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top