感染症学雑誌
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新しい型抗原を有すると考えられるShigella flexneriについて
松下 秀山田 澄夫工藤 泰雄
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1992 年 66 巻 4 号 p. 503-507

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抄録

1986~1989年の間に, 東京都内における赤痢様患者2名, 並びに海外旅行者3名から分離された赤痢菌は, 赤痢菌診断用抗血清においてShigella flexneriの群6抗血清にのみ凝集し, 型抗血清に非凝集の非定型的血清型菌であった.
これら各症例よりの代表5菌株について, 詳細な性状試験を実施した結果, それらの生化学的性状は全株ともS. flexnerのそれと完全に一致すること, また, これら5菌株のうち4菌株は・典型的な病原株であることもSerény試験等により確認された.
88-893及び89-36の2菌株を代表として作製した抗0血清を用いて, 供試5菌株間の0抗原の異同を調べた結果, これらはいずれも同一の抗原を有することが判明した. 次に, 既知S. flexnerの各血清型標準菌株との0抗原の異同を検討したところ, 88-893及び89-36両抗血清は, 同じ群6抗原を持つ1bと4bの両血清型菌においてやや強い類属反応が認められた. このことより, 供試菌株は群6抗原のみを有する変異株であるとも考えられたが, 交叉吸収試験の結果, これらは群6抗原のほか, 既知1~VI型抗原に該当しない新しい型抗原 (仮称88-893) を保有することが明らかにされた.

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