感染症学雑誌
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β-ラクタム薬耐性肺炎球菌性肺炎で死亡した1症例と分離菌の耐性機序
重野 秀明山崎 透永井 寛之後藤 陽一郎田代 隆良那須 勝野路 弓子小此木 研二
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1992 年 66 巻 4 号 p. 508-515

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抄録

ceftizoxime (CZX) 使用中に, penicillin G (PCG) を含むβ-ラクタム薬耐性肺炎球菌性肺炎を併発して死亡した症例 (68歳, 女性, 基礎疾患: 気管支拡張症) を経験したので, その臨床経過と分離菌の耐性機序を検討した.本例は本邦第1例目と考えられる.
本例より分離されたStreptococcuspneumoniae88031株に対する最小発育阻止濃度 (MIC) はPCG=1.56μg/ml, CZX=6.25μg/mlとPC耐性であった.またβ-lactamaseは非産生で血清型は23型であった.
1988年に呼吸器感染症の起炎菌として分離されたS9pneumoniae34株の薬剤感受性を検討した.PCG高度耐性株 (PCGMIC≧1.56μg/ml) は本症例分離株のみであったが, PCG低感受性株 (PCGMIC=0.1~1.0μg/ml) が3株, 8.8%にみられた.CZXに耐性を示したものは本症例分離株のみであった.
PCG感受性株SpneumoniaetypeI (保存株: PCGMIC=0.05μg/ml, CZXMIC=0.1μg/ml, CMX MIC=0.025μg/ml) とPCG耐性株S.pneumoniae 88031株を用い, penicillin-binding protein (PBP) の検出とβ-ラクタム剤の結合親和性を検討した.その結果, 耐性株88031では感性株typeIで検出されたPBPlaが検出されずPBPlbが増量していた.この耐性株のPBPlbはCZXおよびCMXに対して感性株のそれに比べ低親和性であった.
以上よりβ-ラクタム剤耐性S.pneumoniae 88031の薬剤感受性の低下はPBPlbの変異によることが示唆された.

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