感染症学雑誌
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Acinetobacterによる菌血症例の臨床病理学的検討
黒須 いくみ
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1995 年 69 巻 8 号 p. 895-902

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抄録

平成元年1月から平成5年12月までの5年間に血液培養でAcinetobacter spp.が陽性となった37例のうち27例について, その薬剤感受性, 年齢, 基礎疾患, 臨床症状, 炎症マーカー, 中心静脈カテーテル挿入の有無, および使用薬剤について調査した.
27症例のうちAcinetobacter anitratusが23例, A. lwoffiiが4例を占めた. 患者の年齢は新生児が5例, 60歳以上の高齢者が11例であり, 基礎疾患は血液疾患や悪性腫瘍例, 未熟児, 先天異常児などであった. 発熱を23例, 血圧低下を6例, 頻脈を17例, 多呼吸を12例で認め臨床的にsepsis syndromeの状態にあった症例が多かった. 炎症マーカーも多くの例で上昇していた. 中心静脈カテーテルは22例に挿入されており, 培養陽性後すみやかにカテーテルを抜去した13例中9例は解熱し, うち4例はカテーテル先端から同菌が分離された. 7例にヘパリンが投与されていた.
Acinetobacter spp. による菌血症はcatheter-related infection, およびヘパリンとの関係が報告されているが, 今回の調査もそれを支持するものであった. 臨床的にsepsisの症状を示した症例ではカテーテルの抜去により解熱を認めた治療成功例があり, 留置カテーテルのある症例ではカテーテル敗血症の可能性を考えた早期診断, 治療が重要であると思われた.

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