感染症学雑誌
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糞便以外から分離されたBacteroides fragilis groupからのB. fragilisエンテロトキシンの検出
加藤 直樹加藤 はる田中 香お里渡辺 邦友上野 一恵
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1995 年 69 巻 8 号 p. 903-907

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抄録

糞便以外の臨床材料から分離されたBacteroides fragilis groupの菌としてB. fragilis 179株, Bacteroides distasonis 13株, Bacteroides ovatus 9株, Bacteroides thetaiotaomicron 75株Bacteroides uniformis9株, Bacteroides vulgatus 15株の合計300株におけるエンテロトキシン産生性をHT29/C1細胞を用いた細胞培養法により検討した. B. fragilisからは特異抗血清で中和されるエンテロトキシンが36株 (20.0%) 検出された. そのうち, 血液由来株では31%(18/59) がエンテロトキシン陽性であったのに対し, 非血液由来株では15.0%(18/120) が陽性で, 血液由来株から有意 (p<0.05) に高率にエンテロトキシン産生株が検出された. B. fragilis以外の菌種ではHT29/C1細胞に形態変化をもたらす株は認められなかった. 以上の結果から, エンテロトキシン産生性B. fragilisは下痢以外の臨床材料から少なからず分離され, B. fragilisの産生するエンテロトキシンはB. fragilis groupの中ではB. fragilisに固有の毒素であることが明らかとなった. また, 血液由来株では非血液由来株に比べ有意にエンテロトキシン産生株が多いことから, metalloproteaseであるこのエンテロトキシンは菌血症や敗血症において病原因子の一つとして何らかの役割を演じている可能性が示唆された.

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