感染症学雑誌
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赤痢アメーバEntamoeba histolyticaEntamoeba disparの鑑別診断におけるMultiplex-PCR法の有用性
阿部 仁一郎木俣 勲井関 基弘
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2002 年 76 巻 11 号 p. 921-927

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抄録

赤痢アメーバ症の病原体Entamoeba histolyticaと, それとは形態学的に判別のできない非病原性のEntamoeba disparとの鑑別にMultiplex-PCR法の適用を試み, その有用性を従来のPCR法と比較検討した. 実験には培養したE. histolytica HM-1: IMSS株とE. dispar SAW株, および臨床材料から得た7検体 (有症患者4, 無症候性シスト排出者3) を用い, 特異性の比較にはアメーバ以外に3種の腸管寄生原虫Cryptosporidium parvum HNJ-1株, Giardia intestinalis Portland-1株, およびBlastocystis hominis Nand II株を使用した. 結論として, Multiplex-PCR法は, 1) 検出感度が従来法に較べて約10倍高くなる, 2) 増幅産物のサイズが両アメーバ種で異なる (従来法では同一サイズ), したがって, 3) 1検体当たり1本の反応チューブを用いてPCRを行うことが可能であり, DNA polymeraseの使用量も従来法に較べて少ない, 4) 他の腸管寄生原虫類との非特異反応はみられず臨床材料にも十分適用できる, などの諸点で優れた方法であることが確認された.

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