感染症学雑誌
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前立腺肥大症または神経因性膀胱を基礎疾患とする尿路感染症患者に対するファロペネム1回300mg, 1日3回, 7日間投与とレボフロキサシン1回100mg, 1日3回, 7日間投与との臨床効果に関する比較試験
村谷 哲郎飯原 清隆西村 武久稲富 久人藤本 直浩小林 とも子山田 陽司高橋 康一松本 哲朗
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2002 年 76 巻 11 号 p. 928-938

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抄録

ファロペネム (FRPM) は, 唯一のペネム系抗生物質であり, 治験時の複雑性尿路感染症に対する有効率は82.0%と良好な成績を有しているが, 尿路感染症に対する使用頻度は低い薬剤である. このFRPMの臨床効果を検討する目的で, 尿路感染症に対する使用頻度が高いレボフロキサシン (LVFX) と比較検討した.
尿路基礎疾患として, 前立腺肥大症または神経因性膀胱を有するカテーテル非留置の16歳以上の外来患者を対象とした. 投与量は, FRPM1回300mg, 1日3回または, LVFX1回100mg, 1日3回とし, 7日間連続投与とした. 投与開始時および投与7日後に尿中白血球数および細菌数の測定を必須検査項目とした.
期間中に90例が登録されたが, 有効性解析対象例は60例 (66.7%) であった. 有効率 (著効+有効) は, FRPM群90.6% (29/32), LVFX群82.1% (23/28) であり, 有意差は認められなかった. 細菌陰性化率および膿尿の正常化率はFRPM群71.9%および56.3%, LVFX群64.3%および75.0%であり, 有意差は認められなかった. FRPMは, 有意差は認められないもののLVFXの有効率を上回っており, 複雑性尿路感染症の有用な治療薬のひとつとなりうると考えられた.

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