2005 年 46 巻 6 号 p. 365-371
症例は60歳男性. 1990年より糖尿病と肝機能障害を指摘され, 他院にて経過観察されていた. 2003年10月に心窩部痛のため当院初診, 上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部からの出血を認め入院となった. 背景にアルコール性肝硬変があり, AFP, PIVKA-II, AFP-L3分画の上昇に加え肝右葉に多発する腫瘤と門脈腫瘍塞栓を認めることから, 胆道出血を合併した肝細胞癌と診断した. インターフェロン併用肝動注化学療法を開始し, 2クール目からは外来にて化学療法を継続した. 4クール施行途中から胆道感染の悪化を認め, 胆道出血・閉塞性黄疸を最初に発症してから約8カ月後に死亡した. 胆道出血を契機に発見される肝細胞癌は比較的少なく, その予後は不良とされているが, 本症例は画像上腫瘍縮小効果はないものの, 他の報告に比較してインターフェロン併用肝動注化学療法によって延命が得られた1例と考えられた.