抄録
69歳,女性.てんかんの診断でバルプロ酸ナトリウム(VPA)を内服開始2カ月後に皮膚黄染・褐色尿が出現し,VPAによる薬物性肝障害と診断した.高度の肝障害で,急性肝不全への進展を危惧し,VPA中止とともに副腎皮質ステロイド(PSL)を開始したところ肝障害は急速に改善した.しかし,入院時より徐々に進行していた貧血がPSL投与終了時より顕著となり,輸血を要した.骨髄穿刺所見より赤芽球癆と診断し,cyclosporin A(CyA)投与を開始したところ貧血の改善を認めた.VPAによる赤芽球癆の成人例報告はまれであり,薬物性肝障害を同時に発症した症例の報告はない.VPAにより2種類の重篤な副作用が惹起されたことは,それぞれの副作用発症機序を考察する上で示唆に富むと考え報告する.