肝臓
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症例報告
不明熱を契機に発症した,特発性多発肝内動脈瘤破裂の1例
加藤 正人窪田 敬一下田 貢小菅 崇之北 順二澤田 登起彦
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2012 年 53 巻 12 号 p. 862-867

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抄録

症例は70歳代の男性.趣味の写真撮影で海外渡航を繰り返していた.今回一週間のカナダ滞在中から帰国後も発熱が持続するため前医を受診したところ,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)状態であったため緊急入院となった.感染症の可能性を考慮し,抗生剤投与を開始した.入院5日目,突然胸部不快感の出現とともにショック状態となった.造影CTにて肝内出血を認めたため当院へ緊急搬送となった.腹部血管造影を施行したところ,肝内肝動脈に数珠状の拡張を認めたが,明らかな出血源は認めなかった.二日後の腹部血管造影にてA6に動脈瘤の増大を認め,同部位に塞栓術施行した.感染による肝内動脈瘤形成を疑ったが,肝細胞生検を含めた各種細菌培養は陰性,遺伝子検査でも原因微生物特定できなかった.また膠原病の可能性も否定的で,特発性肝動脈瘤破裂と診断した.抗生剤の投与にて全身状態,肝内動脈瘤,数珠状拡張は改善した.

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© 2012 一般社団法人 日本肝臓学会
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