肝臓
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症例報告
異常門脈域を内包し,限局性結節性過形成類似病変との鑑別が問題となったhepatocyte nuclear factor 1α-不活化型肝細胞腺腫の1例
伊藤 勝彦近藤 福雄大多和 哲石井 隆之清水 善明小川 清岸 宏久小豆畑 康児宮崎 勝
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2013 年 54 巻 2 号 p. 135-142

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抄録

症例は26歳男性.心窩部痛にて紹介受診となった.腹部Dynamic CTにて肝巨大腫瘍を認めた.腫瘍中心部分は造影されず,腫瘍内周辺部が不規則に造影されていた.肝細胞癌の可能性を否定できず,かつ腫瘍からの出血の可能性も考えられたため肝左葉切除術を施行した.腫瘍は被膜に覆われ境界明瞭であり,腫瘍中心部には血腫を認めた.肝細胞腺腫に特有の臨床所見が無いこと,組織所見において血腫周囲の腫瘍内充実性部分は良性肝組織であり,結節内や被膜内に異常門脈域を認めたことから,血流異常に基づく過形成結節が考えられた.しかし最終的には,免疫組織染色におけるLiver-type fatty acid binding proteinの所見により肝細胞腺腫と診断した.
本例は,最終的に肝細胞腺腫と診断されたものの,結節内や被膜内には異常門脈域が存在すること,経口避妊薬などの肝細胞腺腫関連因子を伴っていないこと等,従来の肝細胞腺腫の概念とは必ずしも一致せず,新たな免疫組織学的診断法と従来の疾患概念の相違を示す,示唆に富む例と考えられた.

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© 2013 一般社団法人 日本肝臓学会
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