肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
原著
重症肝型と古典型ウイルソン病の診断と難病認定
巽 康彰加藤 文子加藤 宏一林 久男
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 59 巻 2 号 p. 102-106

詳細
抄録

体内に取り込まれた銅は,肝臓で利用され,残余は胆道に排泄される.この調節機構の破綻は銅毒性から肝硬変になる.ATP7Bの同定はウイルソン病の概念を一新した.約1世紀前,SAK Wilsonの報告した肝硬変を持つ神経障害は変異ATP7Bによる古典型である.その原型はIH Scheinberg & I Sternliebの提唱した重症肝型であるが,我々は重症肝型の症例で難病と認定されなかった事例を経験した.本研究では,本邦におけるウイルソン病難病認定基準の問題点を検討した.

我々の施設に本病として登録された58例を対象とした.51例はATP7B解析単独で診断・難病認定基準に達した.6例も臨床所見の追加から,古典型の本病と判定された.肝硬変代償不全期の1例は,尿中銅排泄が増加し,肝に銅顆粒が染色された.正セルロプラスミン(セ)血症と正常ATP7Bを持つ本病の重症肝型として除銅治療を行い救命し得た.しかし,難病には低得点のため認定されなかった.

本病の重症肝型には診断・難病認定項目が少ない.非侵襲的な正セ血症と正常ATP7Bの組み合わせは,重症肝型の肝不全にも対応した基準になりうる.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top